-まずは、お二人が今回『ようこそ実力至上主義の教室へ』(以下『よう実』)の監督として関わることとなった経緯からお話いただければと思います。
岸監督(以下岸):初めにLercheの比嘉プロデューサーから、自分と橋本さん、二人の監督で、今作をやってみないかという依頼がありました。
橋本監督(以下橋本):「なんで二人なんですか?」って聞いたら、比嘉さんが面白いからって言って(笑)。
岸:でも、お祭り感がありますよね。W監督という形はあまり見ませんし、我々も一体どうなるのか想像がつかなかったので、確かに面白いであろうと。何か良い化学反応が起きてくれればという思いでした。きっと、比嘉プロデューサーの狙いもそこだったんじゃないかなぁ。
比嘉P:『よう実』の小説を読んだときに、どちらの監督がこの作品に対して切れ味がいいのかと考えた結果、二刀流だったんです。両方のいいところで切り付けたら、これは強いぞと思いましたね。このアイデアをKADOKAWAの田中プロデューサーに話してみたら、「実現するのならぜひ」と言ってもらえて。であるならば、ということで両監督にお話ししたのがスタートです。
岸:二刀流というか、Lercheで自分と橋本さんはといえば、綺麗に白黒ですからね。
-どっちが白で、どっちが黒なんですか?
岸:当然、私が黒ですよ(笑)。だから、お声がけいただいたのかなと。といいつつ、実際は“実力至上主義”ですから ポイントの高い二人なんだと思いますよ(笑)。
橋本:俺ポイント高いのかな?(笑)。
岸:んーわかんない、俺たちせいぜいCクラスなんじゃないかなって話だけど(笑)
-Cクラスみたいなアウトロー感があると(笑)。そんなお二人ですが、初めて監督として組まれていかがでしょうか?
岸:W監督という立場は初めてですけど、ずっと一緒に仕事をしてきた仲なので、今更、「初めましてよろしくお願いします」というのもなかったですね。
橋本:自分としては、演出をやり始めた時ぐらいから岸さんは監督をされていたので、並んで監督というのも変な感じでしたけど(笑)。
岸:うそぉ、俺はちっともないけど(笑)。
橋本:俺は変な感じだなぁとは思っていましたよ。でもそれより、どうなるのかなというのが楽しみでした。
-制作される上で、お二人は何か役割分担をされていますか?
岸:区分というところでいうと、明確にはないですね。それこそアイデア出しだって両方からしますし。
比嘉P:制作として、絶対最初の設計の部分やスタートの部分は二人の意見を混ぜるということを大切にしています。どちらかがどちらかをやればいいとなってしまうと、W監督制の良さがなくなってしまうので、片方がチェックできていないときは決定ではないというのを、ルールとしてやっています。
橋本:でも、意見が全然違っているというのがないんですよね。大きく言うとちょっと違っているというのはあるんですけど、ごめんなさい全く理解できないというのはあんまりない。
何回か一緒に仕事させてもらっているからっていうのはあるんだと思うんですけど。
岸:だから比較的スムーズにやらせていただいていますし、むしろ相当助けてもらってます。私が(笑)。
-小説に目を通された際はどんな印象をお持ちになられましたか?
岸:殺伐とした話だなあ、世知辛い話だなあと。だから俺のとこきたのかと(笑)。
一同:(笑)。
岸:なので、実は第一印象は「なんてわかりやすいんだ」でした。
内容の話をすると、ポイントのみで払える学園の生活。その中でいろいろとポイントを巡ってドラマが繰り広げられるのが、非常に面白かったです。ラノベだけれど、ラノベっぽくない。珍しい題材なので、この“知的”なバトルを、ちょうど実際に学校に通っているようなな中高生に向けて描いてみよう、という気になりましたね。
橋本:自分の第一印象は「普通にこれ、岸さんが監督に合うなあ。岸さんで見てぇなぁ」でした(笑)。「なんで俺のとこ来たのかなあ」とも思ったのですが、「あ、女の子が出てくるからだな」と思って(笑)。
岸:橋本さんはキャラクターの明るい面を100%活かしてくれる監督だと思うんですよ。
橋本:やっぱり、キャラクターがみんな個性的で面白いですよね。主人公も頭がいいけど、頭がいいだけを売りにしていないというところもありつつ。最初は親しみやすいところから出てきて、だんだん頭が良いというのはこういうことなのね、みたいな。読みながら成長していくのが面白いです。
岸:そういう意味では“知的”な僕にはぴったりだと思ったんです。
一同:……。
岸:なんか言ってくださいよ(笑)。
橋本:現場はみんな、“知的”な岸さんにおんぶにだっこです(笑)。
一同: (笑)。
橋本:脚本作っている時からこんな感じでしたよね。真冬に作っていたのに、笑いすぎて暑くて暑くてしょうがないって言ってみんなTシャツになっているってゆう(笑) 。
岸:もう、暑苦しいまでの面白い本読みで、アイデアがどんどん溢れ出てきましたね。
-笑いの絶えない現場なんですね。そんな制作過程で、今作の軸にされているポイントはありますか?
岸:原作のストーリーラインは基本変えず、雰囲気、やっていることを大事に、というところですね。そこら辺はいじってしまっても意味はないので。ただ、文面で表現するものと、映像で表現するものはまた違いますので、その辺のチューニングはしています。
原作の許容範囲が広く、映像的なアイデアを数多くOKしていただけたので、すごく作りやすかったですし、楽しい形になっているはずです。
橋本:二人とも監督経験があるので、それを活かして、決まっている話数の枠の中でどうやって終わるか、綺麗さもですが期待を乗せられるように意識をしました。
-セリフだったり、映像の絵作りの中で、こだわられているところはありますか?
岸:キャラクターの見せ方ですね。やっぱり見てくださるかたに、まず好きになってもらえるのはそこだと思いますので。
原作は小説なので、文面に対して読み手の受け取り方の幅が、ある程度できるように作られていますよね。そのため、映像化するときには、その幅の中で表現する部分を定めないといけないんです。もちろん学校のシステムなど当たり前の部分もですが、キャラクターについてはとくに気を使って取り組みました。
橋本:トモセシュンサクさんの絵が綺麗なので、それをそのまま再現したいというのはあります。色とか、かなり近くなっていると思うんです。他にも小説で挿絵になっているシーンには限りがあるので、こうゆう学校にいて、こうゆう生活をしいてるんだということが伝わるように、美術設定も一杯考えましたよね。
岸:そう。そもそも「東京高度育成高等学校」ってどんな場所にあって、どんな学校なんだろう、ということも映像化すると見えちゃうからね。
橋本:小説を読んだ方が感じた背景になるべく近づくようにしています。
岸:結果そう見えてくれれば良いなと思います(笑)。
-お二人の一押しのキャラクター、もしくは注目キャラクターはいらっしゃいますか?
岸:そんなの全員に決まっているじゃないですか。
一同:(笑)。
岸:うーん、しいて言うなら、やっぱり龍園さんですよね(笑)。
橋本:龍園好きすぎでしょ。
岸:性が合うんじゃないかな。この人こういう感じだよなっていうのがわかるんですよね。
橋本:自分は堀北とかすごい好きですね。出来そうで出来ない感じ? 一生懸命頑張っているけど、頑張っているって悟られないようにしているけど、みんなに悟られているっていう(笑)。あの感じとか見ているとちょっとかわいいなって思います。
岸:あと(堀北)学も好きですよ。ザッツ優秀超人っていうのが、面白くて(笑)。
-でも高3ですよ?
橋本:高3のレベルじゃないですよね(笑)。
岸: すでに国政に打って出ようかぐらいの方だと思うんです。次の参議院選とかに出馬されるんじゃないでしょうか (笑)。
橋本:いやもう議会とか要らないレベル(笑)。
岸:独裁?(笑)。
橋本:そう、一人でやれちゃう(笑)。
岸:それぐらい優秀な方なので見ていて楽しいです(笑)。
-これから今作を知ってくださる方に、アニメのここを楽しみに見ていただきたいというところはありますか?
岸:やっぱり“知的”な駆け引きですね。“実力至上主義”を掲げている通り、学校内で、殴り合いの喧嘩でクラスバトル、駆け引きの勝負を行う物語なので。そういうところは見ながら楽しんでいただけると嬉しいです。あと当然ながらキャラクターもね。
橋本:この作品って、ポイント制をはじめ、学校のルールがあるんです。それに従っているように見えるけど、そのルールっていうのはどういうものなのか、っていうのをよく考えるというのが面白いと思うんですよね。人間関係とか、ルールを逆に利用したり。実社会だと、すでにある事実を前にして俺もう無理だわってなっている人が多くて、もし逆の方法で考えてみたらどうだろう、実はこれができたんじゃないかと閃いても行動できない人が多いと思うんです。そういった人たちが見れば『よう実』はより面白いんじゃないかと思いますね。
岸:あとは、「社会に出たらこうなのかなあ」と思いながら、学生の皆さんには見ていただけると面白いんじゃないかと。
橋本:社会の厳しさが見えますからね。
岸:そうそう。ルールなんてあってないんだって(笑)。そんなところを楽しんで見ていただけたらそれはそれでいいんじゃないかなあと思いますね。
-では最後に、このインタビューを読んでくださった方へメッセージをお願いします。
岸:とにかくまずは作品をご覧になっていただいて、このインタビューの通りだという風になっていただければ嬉しいなと思います。
橋本:岸さんの言う通り、まずは作品をご覧ください。よろしくお願いいたします。